161:『手元資金の状況を示す経営指標』

私共では、この数ヶ月、数多くの施設・事業所の令和4年度決算業績について、調査分析をする機会がありました。令和4年度決算は、新型コロナ影響の長期化に加えて、物価高騰によるコスト増加、賃金上昇等による人件費増加等の影響によって、赤字施設が増加し、経営悪化が顕著となっています。

 

赤字決算は、様々な悪条件が重なると、避けられない場合もあると思います。しかし、手元資金が潤沢にある場合には乗り切ることができますが、手元資金等が枯渇した状態での赤字は、致命傷になりかねない重大な出来事です。

先日、所轄庁から届く「分析用スコアカード」(経営指標結果の一覧)についてお問合せを頂くことがありましたので、手元資金等の状況を示す、経営指標についてご紹介したいと思います。

①流動比率(%)

計算式 流動資産(*1) ÷ 流動負債(*1) × 100     (%)

 

*1 流動資産、流動負債 (貸借対照表より)

解説  流動負債は短期的な支払義務を表し、流動資産は短期的に資金化できる支払手段を表す。短期支払義務に対する支払能力を示す指標であり、その値が高いほど、短期的な支払能力が高いことを意味する。一般的に本指標の値が200 %以上であることが望ましく、値が100 %を下回るときは、短期支払義務に対する支払能力が不足しており、短期安定性を欠いていることが想定される。
目安  200%以上を基準 (国平均332.1%)

 

②現金預金対事業活動支出比率(ヶ月)

計算式 現金預金(*1) ÷(事業活動支出計(*2) ÷ 12 )  (ヶ月)

 

*1 現金預金(貸借対照表より)

*2 事業活動支出計(資金収支計算書より)

解説  現金預金残高が、事業活動支出の何か月分に相当するかを示す指標であり、本指標の値が大きいほど手許現金預金に余裕があることを意味する。賞与の支払、設備資金借入金の支払など、不定期な支払があるときの資金繰りも考慮すると、3か月程度が望ましいと考えられる。
目安  3ヶ月以上を基準 (国平均4.1ヶ月)

 

皆様の施設・事業所では、人件費率、事業費率、事務費率、経常増減差額率など、事業活動計算書等に基づく分析を中心に行う場合が多いと思いますが、上記の2つは手元資金の状態を示すもので、貸借対照表にも着目した経営指標となります。

令和5年度は、黒字化や経営改善に取り組まれている施設・事業所も多いと思います。皆様の一助になれば幸いです。

株式会社 経営開発センター 野崎 悦雄 拝

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