159:『全国指標を用いた財務分析について』

 

梅雨の中にも初夏の気配が漂うようになりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。社会福祉法人様につきましては、決算書の作成が一段落されたのもつかの間、評議員会や各種提出資料の作成と併せ、令和5年度の経営や業務にとお忙しくされているかと思います。

今回は電子開示システムにより公開された、令和3年度決算データを基に福祉医療機構が作成した全国経営指標の一部紹介とその経営指標を用いた財務分析についてお話しさせていただきたいと思います。

 

○令和3年度 社会福祉法人の現況報告書等の集約結果(全国平均)

項目 算定方法 指標 内容
合理性・収益性 サービス活動収益計(A) 事業活動計算書より    
人件費比率 人件費÷(A) 66.6% 収益に占める人件費の割合
(人件費比率・業務委託費比率) (人件費+業務委託費)÷(A) 70.8% 収益に占める人件費・業務委託費の割合
事業費比率 事業費÷(A) 14.6% 収益に占める事業費の割合
事務費比率 事務費÷(A) 10.1% 収益に占める事務費の割合
経常増減差額率 経常増減差÷(A) 2.8% 収益に対する経常増減差額の割合
安定性 現金預金(B) 貸借対照表より  
事業活動収入計(C)  

資金収支計算書より

 
事業活動支出計(D)  
事業活動資金収支差額(E)  
正味金融資産額 現金預金+有価証券+定期預金+投資有価証券+積立資産-運営資金借入金 307,867

千円

法人の保有する金融資産の純額
現金預金対事業活動支出比率 (B)÷((D)÷12) 4.0ヶ月 事業活動支出(月平均額)に対する現金預金保有額の割合
債務償還年数 借入金残高合計÷(E) 4.6年 事業活動資金収支差額に対する期末の借入金残高の割合
事業活動資金収支差額率 (E)÷(C) 7.7%  
自立性 自己収益比率 ((A)-補助金事業収益-
経常経費寄付金収益)÷(A)
95.0% サービス活動収益に占める自己収益(補助金と寄付金除外)の割合

 

表題にもあるようにこの指標は全国平均のため、地域や規模による差異がございますが、自法人の状況と比較できる貴重な指標となります。まずは表の算定方法を参考に自法人の指標値を算定していただき、全国平均との対比を行うことで今後の経営課題の発見にご活用いただければと思います。

例えば、自法人の過年度決算の経営指標を並べ、グラフ化すれば、過去からの実績推移を視覚的に確認することができます。さらに、そこに定員数や稼働率、職員数の推移等を加えることで、管理会計にも役立てていただける財務分析資料となるのではないでしょうか。

決算書はよく企業や法人の健康診断書に例えられます。この機会に指標を用いた分析をすることで、自法人において再検査が必要な事項の有無(強み・弱み)を把握されてはいかがでしょうか。

株式会社 経営開発センター 野原 崇史

 
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