144:『経営改善のための重要経営指標』

 令和3年度も残り1ヶ月と少しとなりましたが、オミクロン株の感染拡大によって厳しい局面を迎えておられることと推察いたします。新型コロナの影響によって、令和2年度決算に続き令和3年度決算にも大きく影響を及ぼすものと予測されます。

 

この度は、兵庫県所管の社会福祉法人向けに行われている経営指導強化事業において、最も重要視されている“経営指標”をご紹介いたします。

その経営指標とは、①『債務償還年数』と②『借入金償還余裕率』です。いずれも借入金の償還能力を示す指標ですが、経営の基本である安定的な資金繰り(収支状況)に異常がないかについて、重点的に指導が行われています。

①債務償還年数(年)

計算式 借入金残高合計(*1) ÷ 事業活動資金収支差額(*2)  (年)

 

*1 借入金残高合計(貸借対照表より)

=短期運営資金借入金+役員等短期借入金+1年以内返済予定設備資金借入金+1年以内返済予定長期運営資金借入金+1年以内返済予定リース債務+1年以内返済予定役員等長期借入金+設備資金借入金+長期運営資金借入金+リース債務+役員等長期借入金

*2 事業活動資金収支差額(資金収支計算書より)

解説  借入金残高を事業活動資金収支差額で完済するために必要と考えられるおおよその期間を示す指標であり、借入金の償還能力を表す。年数が短いほど、償還能力が高いと言える。
目安  兵庫県では概ね10年以内を基準としている。

②借入金償還余裕率(%)

計算式 借入金元利払額(*3) ÷ 事業活動資金収支差額 ×100 (%)

 

*3 借入金元利払額(資金収支計算書より)

=(支払利息支出-借入金利息補助金収入)+(設備資金借入金元金償還支出-設備資金借入金元金償還補助金収入)+ファイナンス・リース債務の返済支出+長期運営資金借入金元金償還支出

解説  元利金返済の負担の大きさを示す指標である。事業活動によって生み出す資金から元利金返済額を賄えているかどうか、安定的に資金繰りが行われているかどうかの参考となる。

本指標の値が100%を上回る場合、事業活動による獲得資金で元利払いが賄えていないことを表し、財務安定性に問題が生じている可能性がある。

目安  兵庫県では100%以内を基準に概ね50%以内を目安としている。

 

いずれの経営指標も「資金収支計算書」における「事業活動資金収支差額」の多寡によって結果に影響するため、経営管理では重要性の高い管理項目となってきます。

現在、補正予算や次年度当初予算の策定を進めておられると思います。通常、経営指標の計算は、決算額に基づいて行うものですが、予算上の「事業活動資金収支差額」に基づいて、債務償還年数・借入金償還余裕率がどの程度になるかをあらかじめチェックする事ができますので、是非とも計算して頂くことをお勧めいたします。

新型コロナの影響によって、令和2年度・令和3年度は経営悪化が顕著となっております。先行き不透明な状況であるからこそ、経営指標等の“客観的データに基づく経営”の重要性を痛感いたします。

 

株式会社 経営開発センター 野崎 悦雄 拝

 

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