139:『同一労働同一賃金の最高裁判決を受けて』

 早いもので、今年も残り2ヶ月となりました。今回は、最高裁判決のあった同一労働同一賃金についてレポートしたいと思います。

 

同一労働同一賃金に関しては、大企業では2020年4月に改正法が施行され、2021年4月には中小企業の施行が迫っておりますが、賞与や退職金、扶養手当などの重要事項について、最高裁の判断が示されていなかったことから、確定的な対策を取り難い状況にありました。

しかし、10月13日の大阪医科薬科大学事件では「賞与」の待遇差について、メトロコマース事件では「退職金」の待遇差について、続いて10月15日の日本郵便事件では「扶養手当等の待遇差」について、最高裁の判断が示されました。

<最高裁判断の要約>

事件 原告 最高裁の判断
①大阪医科薬科大学事件

 

アルバイトの事務職員 正社員と職務内容等に一定の相違があり、賞与を支給しないことは、不合理ではない。
②メトロコマース事件

 

売店販売員の契約社員 正社員と職務内容等に一定の相違があり、退職金を支給しないことは、不合理ではない。
③日本郵便事件

 

日本郵便契約社員 正社員と職務内容に相応の相違はあるが、年末年始の勤務手当、病気休暇、夏期休暇・冬期休暇、祝日給、扶養手当に係る労働条件の相違について、不合理な格差がある。

 

同一労働同一賃金では、職務内容等(①職務の内容、②職務の内容・配置の変更の範囲、③その他の事情)により不合理かどうかを判断することになりますが、今回の判決では、「賞与」及び「退職金」については、職務内容等に相違があることを理由として、待遇差は不合理ではないと判断しています。

しかし、「年末年始の勤務手当、病気休暇、夏期休暇・冬期休暇、祝日給、扶養手当」については、職務内容等の相違を認めた上でも、待遇に差を設けるのは不合理と判断している点が、ポイントかと思います。

 

社会福祉法人では、年末年始手当、扶養手当、住宅手当、各種休暇等を採用しているケースは、非常に多いと思います。

今後の対策の優先順位としては、休暇・諸手当>賞与>退職金の順番になると思われます。

まずは、正職員と契約職員・非常勤職員との間の、休暇及び諸手当の待遇差を整理分析し、新たな手当支給対象者のリストアップ、人件費増加の試算等を行った上で、改めて支給意義や目的、支給要件の検討が必要になってくるかと思います。

また、契約職員・非常勤職員の職務内容等については、賞与・退職金の判例で重視された、正職員との相違点(職務の内容、責任の程度、異動の有無やその範囲)を明確化するとともに、正職員への登用ルールを整備しておく事が重要と考えます。

 

株式会社 経営開発センター 野崎 悦雄

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