135:『決算分析を通じた 業績改善』

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言が解除されて1ヵ月を超えましたが、まだ新たな感染者が発生しております。新型コロナウイルスの感染者数は減少しているものの、コロナが収束したわけではなく、今後起こるかもしれない第2波、第3波には十分気を付けたいものです。

さて、この度は新型コロナウイルスが猛威を振るっていた期間に作成された決算書の活用について、書かせていただきます。この決算は、感染予防を意識しながらの作業となり、例年以上に、ご苦労が多かったのではないでしょうか。

決算書は、法人様の健康診断書ともいわれます。今一度、作成された決算書を基に自法人の経営状況を分析されてはいかがでしょうか。

下記は、福祉医療機構がホームページで公開している平成30年度経営分析参考資料(社会福祉法人19,347法人)から一部抜粋した法人全体の平均指標を記載したものとなっております。

 

【経営指標】

分析項目 計算式 法人様の実績 平均指標 説明
収益性 経常増減差額率 経常増減差額÷サービス活動収益計   2.94% 経常活動による収益性を示しています
安全性・継続性 現金預金対事業活動支出比率 現金預金÷(事業活動支出計÷12)   3.9ヵ月 現金預金残高が、事業活動支出の何か月分に相当するかを示しています
債務償還年数 借入金残高合計÷事業活動資金収支差額   4.8年 借入金残高を事業活動資金収支差額で完済するために必要なおおよその期間を示しています
合理性 人件費率 人件費÷サービス活動収益計   65.8% サービス活動収益に対する人件費の割合を示しています
人件費・委託費比率 (人件費+委託費)÷サービス活動収益計   69.9% サービス活動収益に対する人件費と業務委託費の合計の割合を示しています
事業費比率 事業費÷サービス活動収益計   15.2% サービス活動収益に対する事業費の割合を示しています
事務費比率 事務費÷サービス活動収益計   10.1% サービス活動収益に対する事務費の割合を示しています
減価償却費率 減価償却費÷サービス活動収益計   6.7% サービス活動収益に対する減価償却費の割合を示しています
正味金融資産額 現金預金+有価証券+定期預金+投資有価証券+積立資産-運営資金借入金   291,403千円 法人の保有する金融資産の純額を示しています
正味金融資産・減価償却累計額比率 正味金融資産÷減価償却累計額   61.6% 減価償却累計額に対する正味金融資産額の割合を示しています

 

経常増減差額率は、1年間事業活動を行ってきた結果、黒字か赤字かを確認する上で、重要な数値になりますので、特に注意し、ご確認いただければと思います。

 

今年度は、新型コロナウイルスの影響もあり事業計画等で掲げた実績が思うようにあがっていない法人様も見受けられます。そこで、上記指標を基に法人様の実績と平均指標を比較、検討することで強みや弱みが明らかになれば、次の一手となる糸口が見えてくるのではないでしょうか。また今年度においては、稼働状況の低下により、予定していた収入の確保が難しく、想定していたより手元資金が減少しているケースもございますので、現金預金残高にもご注意いただければと思います。実際、ご報告させていただきました法人様では、実績を時系列に比較を行いましたが、令和2年度(今年度)の法人実績を予測する上で参考にされておりました。まだ、今年度は始まったばかりです。残り約9ヵ月間で、新型コロナウイルスにより受けた影響額をどこまで取り戻せるかが、多くの法人様での課題となることが予測されます。苦労されて作成された決算書を今一度、ご確認いただき、今後の法人運営に活かしていただければ幸いです。

 

株式会社 経営開発センター 稗田 修生

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