123:「心を高める、経営を伸ばす」稲盛 和夫 著より

 いま、特に高齢者福祉事業にあっては超高齢社会を受けて市場規模が急膨張しており、医療法人や一般企業からの高齢者福祉事業への参入が相次ぎ、競争激化の様相を呈しています。これに対応するには、競合他社のサービス内容や動向をしっかりと把握し、自社のサービスの差質化を具体的に進める必要があります。

 また、2025年(今から6年後)には団塊の世代が全員後期高齢者となり、高齢者福祉事業の主要顧客層となってきます。このことは高齢者事業者にとっては看過できない大きな要素だと考えます。というのは、従来の顧客層は戦前世代で比較的辛抱を美徳とされる利用者が多かったが、団塊の世代は日本の高度経済成長を担ってきたという自負と同世代の人口が圧倒的に多く競争意識が強い。そのため個人の主張が強くお客様意識が強い傾向があるからです。

 これに対応するには、徹底した顧客志向に裏付けされた接遇やサービスの有り方を今一度総点検する必要があります。

 このように、これからの法人経営は非常に混沌とした激変する外部環境を乗り越えていかなければなりませんが、こんな時こそ、普遍的な経営哲学を持つ必要があると確信します。そこで今回は、稲盛和夫著の「心を高める、経営を伸ばす」から2話ご紹介したしますので参考にしていただければ幸いです。

 

【1】次元の高い目的を持つ

 経営の目的をどこに置くかということが重要です。私はなるべく次元の高いものであるべきだと思っています。

 なぜ高い次元の目的意識が必要なのでしょう。我々は、経営に情熱を燃やし、エネルギーを高めていかなければならないのですが、お金が欲しいとか、名誉が欲しいという欲望は、強いエネルギーを持っている反面、必ず後ろめたさが伴ないます。この後ろめたさがエネルギーを押し下げるわけです。

 人間ですから、やはり大義名分が必要なのです。誰に聞かれても、自分の良心に照らしても、立派だと言えるだけの目的がなければならないのです。堂々と公言できる立派な目的があれば、誰に遠慮することなく、エネルギーを高めていくことができます。そのためにも、経営の目的は、次元が高い方が良いのです。

 経営の目的は、経営者の人生観とも言い換えることができるでしょう。いびつな人生観から生まれる、狂ったような情熱は、一時的には成功につながることもあるでしょうが、やがては必ず失敗に結びつきます。

 これに対して人生観や哲学が浄化され、立派なものになっていると、成功を収めた後、同じ要因で失敗するといったことはないと思います。

【2】お客様に喜んでいただく

 企業が利益を追求する集団であることの意味をはき違え、自分たちだけが儲けんがため、という仕事の進め方をしているケースがあります。

 これは絶対にあってはならないことです。社外の客先は当然ながら、社内の部門間であっても、相手に喜んでいただくということが商いの基本です。

 私たちが納期に追われて一生懸命に働くのも、お客様が必要とされるときに品物を届けたいと思うからです。また、「手の切れるような製品」を作らなければならないのも、お客様の要望に応えたいと思うからです。そして、お客様がさらに高い利益をあげられるように、新製品の開発を行わなければならないのです。全ては、お客様に喜んでいただくという一点から出ているのです。

 自分たちの利益のみを考えるケースが今非常に多いようですが、そのように自己中心的にものごとを考えている人には、ビジネスチャンスは訪れにくいものです。素晴らしいビジネスができる人とは、相手が儲かるようにしてあげる人です。これがビジネスチャンスをもたらし、ひいては自分の利益も生むのです。

 

 企業論理と福祉論理は違うとおっしゃるかもしれませんが、私は、商いの基本は普遍的だと考えるのですが、いかがでしょうか。

文責  (株)経営開発センター  参与 阿野 英文

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