謹んで新年のご挨拶を申し上げます

令和2年 元旦

お客様各位                               

税理士法人 稲田会計   

株式会社 経営開発センター

グループ代表  稲田  実 

代表取締役   野崎 悦雄

専務取締役  鳥澤 靖幸

 

                          

 新年、明けましておめでとうございます。

 旧年中は大変お世話になり有難うございました。本年も何卒よろしくお願い致します。

 

 一昨年は度重なる災害による甚大な被害が発生し、経済面に大きなマイナスを与えましたが、昨年も同様に自然災害による甚大な被害が発生しました。

 1月3日熊本県熊本地方を震源とするM5.1の地震が発生し、2月21日北海道胆振(いぶり)地方中東部地震、5月10日日向灘地震、5月25日千葉県北東部地震、6月18日山形県沖地震、8月4日福島県沖地震など次々とM5~6の地震が日本列島を襲いました。

 また9月9日台風15号が関東地方に上陸し、千葉県を中心に住宅被害7万棟、長期に及ぶ停電93万戸など甚大な被害の発生。さらに10月12日台風19号が伊豆半島に上陸し、関東地方、信地方、東北地方など記録的な大雨となり、床上浸水2万5千棟以上、床下浸水3万棟以上、死者・行方不明者90名以上を記録しました。

 さらに大雨が6月29日九州南部に、8月27日九州北部に、8月30日北海道岩見沢市、三笠市に、9月3日岡山県新見市に、10月25日千葉県、福島県に、いずれも記録的な大雨が降り、河川の堤防の決壊や住宅の浸水や全壊・半壊など甚大な被害をもたらしました。

 わが国は近年、自然災害による甚大な被害が数多く発生しており、これに対する備えが必要であり、従業員の避難訓練や安否確認方法、BPC(有事の際の早期復旧・リスク削減)策定による事前対策が求められます。

 

 国内景気について、個人消費や設備投資、公共投資など内需は堅調ですが、外需は中国、アジア向けの鉱工業生産や米国向け自動車が減少し、また訪日韓国人の減少を受けインバウンド消費など低迷しています。さらに大型台風など自然災害による生産・販売の不振が影響しています。

 世界景気が全般的に勢いを欠くなか、外需の持ち直しと内需の底堅さに支えられ、緩やかな景気回復が続く見通しであるとのことです。

 

 世界景気低迷の要因について述べますと、一昨年始まった米中貿易戦争は一時休戦を迎えましたが、昨年5月、米国は2000億ドルにのぼる追加関税を課すと警告し、これに対して中国も関税の報復措置を発表し、米中貿易戦争は益々エスカレートしていきます。これは先端産業の覇権を巡る争いであり、互いに容易に譲歩できないと思われます。

 世界経済にとって最大のリスク要因は、米中の今後更なる関税対立や解決の長期化、またEU圏では、英国のEU離脱をめぐる貿易・技術面において長引く不透明感、さらに日本と韓国、米国とメキシコなど国家間の経済摩擦や紛争、対立が、世界のサプライチェーンを混乱させることにあります。

 このような貿易摩擦や紛争・対立が緩和し、自由で公正な貿易により経済秩序が守られ、世界のサプライチェーンの安定化が世界景気の回復につながると思います。

 昨年(令和元年)10月24日、播磨経営倶楽部会員16名で神戸市灘区にある西部電気建設㈱本社を訪問しました。坂上彰社長には同年6月に同倶楽部で講演していただいたばかりでしたが、とても有意義なお話であり再度お話を聞きたくお願いしました。

 

 同社は昭和24年に西播磨地域の電気工事業者が出資し、合同企業として姫路市綿町に設立されました。昭和50年には故尾崎誠一氏が社長に就任され、就任時年売上10億円でありましたが、平成元年には60億円に、平成4年には100億円となりました。

 この間、神戸営業所、大阪営業所を開設し、本社を姫路から神戸へ移転されました。同社は、創業70年を向かえ、平成30年3月期 年売上高160億円、自己資本額114億円、自己資本比率80%、従業員160名の超優良企業です。この超優良企業がどのようにして作られたのか、その源泉を知りたくて訪問に至りました。

 

 同社のパンフレットを見ると、お客様のために成長する4つのチカラとして下記のことが書かれています。

「お客様にとって、今後とも安心して仕事を任せていただける存在となれるよう、また、厳しい競争時代に生き残っていけるコスト対応力を身につけられるよう、電気設備工事の施工管理専業として日々能力の向上に努めています。」

  • 施行管理力→ 省略
  • 人間育成力→ 省略
  • 総合提案力→ 省略
  • 経営・財務力→お客様が安心して発注いただける、また社員が安心して勤められ

る会社であることを目指し、財務体質の強化に注力した経営を行っています。

 1,2,3が経営力強化の骨子であり、その結果が4に表れ、企業を動かす力であると意義付けられていることに脱帽しました。そして4の経営・財務力は次の6つの指標を10年間推移で、会社案内に表示されています。 

売上高/営業利益率 →  9%~12%へ右肩上がり

自己資本額/自己資本比率→ 自己資本額は右肩上がり、114億円、80%  

社員数         → 120名~160名へ右肩上がり

社員の平均年収/社員の平均年齢 → 直近700万円超 /38歳

お客様評価年間平均評点/諸官庁工事成績年間平均評点 → 直近88点/86点

経営審査評点値P点     → 直近 1424点(兵庫県内企業 トップ)

 

 特筆すべきは社員の平均年収700万円超です。社員が安心して勤められる会社であり、何よりも家族が会社や仕事に対して認容してくれ、仕事に対する誇りが持てるのです。

 盤石な経営基盤を作られましたが、その礎は研修制度にあります。先ず入社から5年間は研修期間となります。入社1年間は研修所に配属となり、電気工事士試験、人間教育、社会教育を受け、現場業務はありません。2年、3年生は工務部研修に配属され、工務実習により現場業務を習得します。現場に追われる事はありません。4年5年生は実務研修班に配属され、班長の下小規模物件より担当施工に当る。6年生より工務部配属となる。

 入社5年間は現場業務に追われることなく、基礎知識、人間教育、社会教育を受けることができ、社員としての基本的素養が身につくのです。

 次に人間力研修があります。40才までに1年半の研修を2回程度受けることになっています。その内容は次の通りです。

  • 人生には無限の可能性がある
  • 成功とは何か
  • われわれは条件付けられた人間である(家庭、制度、習慣について)
  • モチベーションへの理解(マズローの欲求の5段階)
  • 心構えと習慣、成功への5原則、目標設定によるモチベーション

    ・・・・・・・・・・・以降省略

 

 受講者が上記のテーマに合わせ、自己成長、仕事面に置き換えた思考・行動など実践を行い、まとめのレポートを提出し、自己の意識、価値観を高める。そして成功の定義を全ての取り組みに実践し、内面変化、潜在能力への追及を行う研修です。この研修制度は、明確なプログラムが構築されており、上司がアドバイザーとして参加し、受講者をサポートしています。

  

 また経営の拠り所(経営指針)として、次のことが明確化されています。

  • 創業者の教えを継承する

 故尾崎相談役の魂を社員一人ひとりが学び取り、現状維持は衰退のもと、挑戦に次ぐ挑戦のみが躍進するという精神を受け継ぎ、時代の要請に対応する。

 2.同業他社の一歩先を進む顧客満足の提供

 どこよりも安く、どこよりもいい仕事をすることが当たり前だとすること。そして厳しい仕事で知恵と工夫で能力の高い社員を育てること。

 3.謙虚、素直、求める心で社員を厳しく律する会社にすること

 自分ができる人間と過信すれば謙虚さがなくなり、成長が止まってしまいます。

 自分は未熟だと思う気持ちから謙虚さが生まれ努力することができます。楽な仕事は生活力も自己成長もありません。

 4.厳しく律すること

 この世で自分ほど可愛い者はない。可愛いから危険なこと、困難な道は避けて通ろうとする、これが人間の本能です。しかし困難に挑戦しなければ望むものを手にすることはできない。自分が可愛いなら、幸せを望むなら自分を磨け、敢えて困難に挑戦し、経験により自信をつけること。

 5.自己責任と覚悟

 世界経済から影響を受ける日本、企業もこれに追随しなければならない。全てが自己責任で対応が求められる。企業も生き残りをかけた意識が必要であり、社員の給料も経験豊富だからでは高い給料は払えない。あくまでも会社貢献に正比例した年俸制を採用するしか生き残る道はない。

 6.上席者自ら率先垂範する会社の継承について

 創業者の偉大な魂を継承することは大変難しいと言われますが、今後どのようにして社員を引っ張り、永続する企業作りをすることが大きな課題です。最も大切なことは上席者ほど働く会社にしなければいけないということです。安心、慢心が邪魔をして上席者ほど率先垂範が難しいと言われます。しかし、いつの時代も上席者が部下の手本となり、部下を指導していくことが企業の力になることは間違いありません。

 7.期末賞与支給、年俸制

 非生産部門以外は部署目標数字、個人目標数字を設定し、公平な評価を行う。社員の幸せを願い、社員の報酬を高くして家族のしあわせに繋げるため、期末手当制度を継続しています。

 

 このような素晴らしいお話を淡々と語られる坂上社長、さらなる発展を目指し、確かな手応えを掴んでおられるようで、静かなる力強さ、確かな自信を感じた次第です。

 故尾崎誠一相談役の社葬のビデオを視聴させて頂きました。坂上社長の挨拶、司会のナレーションに感動すると共に、熱いものが胸にこみ上げてきました。

 司会のナレーションで披露された、故尾崎誠一相談役の思いを以下の通り紹介します。

 

 もう随分昔のことになりますが、ある日こんな事がありました。一人の社員が帰宅し、玄関を開けようとしたら、子どもと妻の声が聞こえてきました。

 “お母さん今度ケンちゃんを家に呼んでもいい?”“いいわよ”“じゃぁお母さん、家もケンちゃん家みたいに玩具や絵本を買ってくれる?”

 子どもの友達ケンちゃんのお父さんは大きな会社に勤めていて、高いお給料を貰い、裕福だから玩具や絵本がたくさんあるということです。

 当時の西部電気は小さな会社で、お給料も良くありませんでした。

 “あのね、ケンちゃんの家はお金持ちだけど、うちはそうじゃないのよ、だから同じように買ってあげることは無理なのよ”“いやだ、買って、買って、買ってくれなきゃ僕、ケンちゃんと遊べないよう!”“ダメなものはだめです”

 “お母さんがダメって言うならお父さんが帰ってきたら頼んでみる”

 “お父さんに言ってはいけません、お父さんは毎日一生懸命働いて、くたくたになって帰ってくるのよ、そのお父さんにそんなことを言うとお父さんだって悲しくなるでしょう”“どうして、どうして、いやだよう!”

 その社員は玄関先で何とも言えない思いで会話を聞き、しばらく中に入ることが出来ませんでした。その話を聞いて、当時社長だった尾崎誠一相談役は考えました。

 どうすれば社員一人ひとりの暮らしを豊かにすることが出来るだろうか?もっと収入を増やすにはどうしたらよいだろうか? 今のままではこれで精一杯だ。

 そうだ、管理だ!管理会社になれば収益を上げ、給料を増やすことが出来るだろう。

 しかし、管理は難しい。難しいが他の人がやっていることを自分たちも同じ人間なのだから、出来ない訳がない。いや出来る。

 こうして西部電気建設はこれまで手にしていたペンチをペンに持ち替え、管理会社として舵を切ることになりました。

 もちろん、今日に至るまで順風満帆な事ばかりではありませんでした。時には時代の波に押し流されそうになったり、災害に見舞われたりもしました。

 しかしながら、その度に社員一丸となって、多くの協力会社に支えられ、必ずや西部電気建設は勝つと信じて、荒波を乗り切ってきました。

 人に厳しく、自らにはもっと厳しく、激動の人生を歩んできた西部電気建設株式会社、創業者・相談役の故尾崎誠一氏。

 死出の床では愛妻をはじめ、家族一同が見守る中、“私の人生に悔いはない、最高の人生やった、有難う”と穏やかな表情で語ったのが最後のお言葉でした。

 

 弊会計事務所ではお客様の税務・会計業務を基本に経営助言・経営支援業務を行って参る所存です。ご紹介いたしました西部電気建設㈱の様な永続発展ができる企業を目指し社員一同研鑽して参りますので,何卒宜しくお願い申し上げます。

 本年は“庚子(かのえね)”の年です。

 全く新しいことを始めるのではなく、過去を振り返り将来を見据えた計画を練り直すことでチャンスを生むことが出来ると年と言われています。じっくりと足元を見直し、良い年にしたいものです。

 皆様方におかれまして、良き一年であることを祈念申し上げます。

 

 年頭に当たりまして、先ずは書面を持って謹んでご挨拶申し上げます。

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