「福祉業界は恵まれたポジション」 1月25日付けで介護給付費分社保審科会より平成24年度介護報酬改定が諮問されました。
介護報酬改定率1.2%アップではありますが従来の処遇改善交付金を考慮すると実質マイナス改定となっています。高齢者事業者のみなさまは報酬単価を分析しながら一喜一憂のことと存じます。
マクロ的、長期的に俯瞰しますと、全世界が注目するほどの超高齢化社会、生産年齢人口の減少、景気低迷による税収不足、どれを取っても報酬が上がる要素はないのが現状です。今後についても利用者負担率のアップと消費税増税を真剣に論議するステップになるようです。
しかしながら、産業界全体で観れば福祉業界(あえて業界と申し上げます)は大変に恵まれたポジションにあると思います。マスコミは介護スタッフの給与が低いとか離職率が高いとか喧伝しておりますが、はたしてそうでしょうか。
弊社はコンサルティング会社として多くの中小企業さまの経営支援を行っておりますが、その現状は非常に厳しいものがございます。社会福祉法人さまと中小企業さまの両方の経営のお手伝いをしております弊社から観て、社会福祉法人さまの経営は非常に安定しており恵まれたポジションにあると実感します。そしてその恵まれたステージで仕事ができる幸せを経営者側も、さらにスタッフ側もしっかりと認識し、自分達の仕事に誇りとやりがいを感じることが混迷する社会情勢の中で勝ち残る重要な要件と考えます。
私が福祉業界が恵まれているという根拠ですが、 ①外部の経済変動の影響を受けにくい。(企業にあってはリーマンショック・急速な円高等により痛烈なダメージを受けています) ②製品価格は公定価格(介護報酬等)で同業者同士の価格競争がない。(牛丼業界の価格競争はまさに体力消耗戦の状況を呈しています) ③お客様の数が急拡大している。(高齢者福祉事業)(生産人口対象の産業はお客様が減少し売上拡大が不可能な状況) ④収入の9割が保証(国保連にて)されており貸し倒れによる連鎖倒産がない。(企業は景気低迷による信用不安に脅えています) ⑤よほど誤らない限りは利益が確実に確保できる。(企業の75%は赤字で、利益率10%は一握りの超優良企業のみです) ⑥そして何と言っても、社会問題の解決への貢献度が大きい。(社会になくてはならない存在意義がある)の6点に集約されます。
そしてそれを証明する事実として、2010年10月14日の日本経済新聞のトップ記事に『若年層収入、女性が男性を上回る』(製造業不振・介護など堅調で)と掲載されました。これはいままでの価値観をくつがえすほどのビッグニュースです。これからはデートでコーヒー代をおごるのは女性の時代になったと言えます。この現象の要因は、女性が多く入職する福祉・医療界の業績が、男性が多く入社する製造業(企業)にくらべて圧倒的に堅調であるということです。
どうぞ、福祉事業経営陣のみなさまにあっては、マスコミが言う低賃金・重労働に惑わされずに、スタッフのみなさんへ上記の福祉界の6つの優位性を訴求し、これからの日本の基幹産業の担い手としてのプライドと経済的安定感に感謝しながら日々の業務に邁進されるように励ましていただけたらと愚考いたします。 |
株式会社 経営開発センター 福祉経営部 阿野英文