新年、明けましておめでとうございます

平成29年 元旦 

お客様各位                               

税理士法人 稲田会計   

株式会社 経営開発センター

グループ代表   稲田  実

代表取締役社長  野崎 悦雄

専務取締役    本岡 憲英

                           

  新年、明けましておめでとうございます。

 旧年中は大変お世話になり有難うございました。今年も何卒よろしくお願い致します。

 

 平成28年は中国市場の暴落、中東問題、原油価格の下落、日銀のマイナス金利導入、英国のEU離脱など経済をめぐる様々な問題が起こりました。

 平成27年12月末、1ドル120円の為替が平成28年1月より円高に進み、7月には1ドル100円台になりました。その後8月、9月、10月と100円台前半を推移しましたが、11月8日トランプ氏の米国大統領当選、11月30日OPEC合意による石油減産決定によりドル高、円安が進み、12月中旬には1ドル118円台となりました。

 また一昨年末19千円台であった日経平均株価は平成28年2月には15千円台に急落しました。その後株価は16千円前後と低迷していましたが、11月ドナルド・トランプ氏第45代米国大統領に当選とOPEC合意による石油減産決定により、12月中旬において19千円台まで一気に回復しました。

 英国のEU離脱、そしてトランプ氏の米国大統領当選は、大方の予想を覆すまさかの出来事であり、世の中には常識では考えられない事が起きるということを認識させられたのです。

 円高によりメリットを享受していたビジネスが、一転して円安となり不利な状況に追い込まれる、このような変化への対応について昨年の年賀に書かせていただきましたが、まさにこのことが起きたのです。再度このことについて述べさせていただきます。

                     

 ドイツの哲学者アルトウル・ショペンハウアーは変化へ対応の難しさを次のように説いています。(人生知警句集(白取春彦訳))

 「多くの人は今のこの状態がずっと続くだろうと漠然と確信している。あたかも人生を大体見通すことが出来ているかのように。けれどどういう状態でもそのまま持続するわけではない。刻々と状況が変わる。人生はうねる、揺れる、変転する、変貌する、変化するということだけが続いていく。従って賢い人は現在の見せかけの持続性に惑わされない。またこの状況がいつまでも続くなどとは考えていない。賢い人が考えるのは次の変転がどの方向へと変わっていくかという予見のもとに行動する。」

 ビジネスは変化するものであり、ビジネスの流れを予測すると共にどのような打ち手が必要であるのかを考え、行動していくことが経営者に求められていることを教えています。

                     

 宍粟市山崎町において、過去2回講演いただいた法政大学大学院教授の坂本光司先生は、著書「日本でいちばん大切にしたい会社」の中で次のことを述べています。「ここに紹介する企業の存在は、“問題は内ではなく、外”と嘆き悲しむ、被害者意識に凝り固まった経営者の「景気が悪い、業種・業態が悪い、規模が小さい、ロケーションが悪い、大企業・大型店が悪い」などの言い訳をことごとく否定してくれます。また被害者意識に凝り固まった経営者のもう一つの特は、何よりも重視し、その実現を追及しなければならない社員や下請企業や顧客等の幸せに対する思いが総じて弱い・低いということです。」

                    

 昨年1189日において、長野県の伊那食品工業㈱と静岡県の沢根スプリング㈱の企業訪問をしました。この2社は坂本光司先生の著書のモデル企業として紹介されています。

 この2社は共通点が多く、特に経営理念や経営に対する考え方は全くといっていいほど良く似ています。それは従業員の幸せを一番に考えていること、急激な成長を望まず、残業時間は殆どない。そして会社の業績が良く健全経営を実現していることです。斜陽産業といわれた寒天業界にありながら58年間成長し続けている伊那食品工業㈱訪問の内容をご紹介します。

                    

 お昼前に到着し、女性社員の案内で寒天レストランさつき亭に向かい昼食をとる。メニューは、寒天をふんだんに使った定食でヘルシーそのもの、スープ、デザートと結構満足感がある。

 食後、ガーデンを散策する。33000坪の敷地に工場や社屋は赤松や花木に包まれ、工場のイメージが全くない。ガーデンを散歩しながらお土産店に立ち寄る。観光客がひっきりなしに来園してお店、レストランやお土産物店はお客で一杯。

 午後1時より「かんてんぱぱホール」にて取締役丸山さんの温厚な語りで講義が始まる。

 

(会社の概要)

年商 180億円、社員数 550名、業種 寒天製造 国内シェア80%、海外シェア15

58年間成長を続け、社員を雇い、給料とボーナスを上げてきた。また創業以来一度も社員のリストラをやったことはない。

(経営理念)  

 経営理念は社員の幸せを通して社会に貢献することです。企業は永続的に安定成長することにより多くの人を幸せに出来ると信じています。末広がりの成長を目指すには急激な成長を抑えなければなりません。当社は成長の数値目標を掲げていません。売上や利益の数値は自然体の年輪経営の結果であり、あえて目標を掲げる必要はないと思うからです。社員一人ひとりが能力を十分発揮して色々な面で成長できることを目指しています。

(社是)    

「いい会社にしよう」です。いい会社とは単に経営の数字ではなく、会社を取り巻くすべての人々が日常会話の中で“いい会社だね”といってくださる会社、社員自身が会社に所属することの幸せをかみしめる会社です。会社は誰のためにあるのですか?社員のためにあるのです。社員はファミリーです。

(経営方針)

経営理念と社是に基づき次の3つの経営方針が作られました。

1.無理な成長を追わない

 景気を追わない、流行(ブーム)を追わない。景気を追っていると、好況のときには会社を大きくしようということで過剰投資をしてしまい、それが去るとリストラをしたり、賃金カットや商品の値段を下げてしまうことになる。木の年輪が一年ずつ増えていくように着実な、安定成長を目指すこと。

2.敵をつくらない

 同業者と熾烈な競争をしないために、オンリーワンを目指す。つまりこの世になかった商品や他社が出来ない商品、お客様のニーズ、ウォンツのある商品を作り続けること。また下請企業に対しても、上位の立場から無理な注文をし、それが益々助長していくことの無いよう、下請企業の心情を理解して共に生きていくこと。

3.成長の種まきを怠らない

 社員の約1割が研究開発部門であり、商品開発、用途開発を行い、成長するために

事業の種をまき続けること。成長するのも利益を上げるのも、会社を継続するために

ある。なぜ継続させるのかといえば、それは社員を幸せにするためです。

(モットー)  

企業は働く社員の幸せのためにある。人間の本当の幸せとは何か。健康である幸せ、五

体満足である幸せ、目標を達成する幸せ、知る幸せ、体験する幸せ、食べる幸せ、愛し

される幸せ、褒められる幸せ、社会に役立つ幸せ・・・・。

 会社は社員一人ひとりの幸せを心の底から感じるためにあるのです。

→残業時間は殆どゼロで、家庭生活を充実する時間に充てることができます。

2年に1回全社員海外旅行。企画は社員が行う。知る、体験する、食べる幸せを体感。

(社員教育)  

人間教育が大事 “立派な社員より立派な社会人になれ”

→人の役に立つ、周りの人に役立つ、地域に役立つことは何かを考えること

→人に迷惑をかけない、悪いことをしてはいけないとは何かを細かく教育する

→感謝することの大切さ、「感謝」の反対は「当たり前」

(例)駐車する時は出来るだけ遠くに駐車し、周りの人に利便性を譲る

会社の出口は右折をすると周りの車が渋滞するため、右折禁止

ごみの分別処理、労災事故を起こすと周りに迷惑をかけるため労災事故を起こさ

ないこと等・・・社員が自主的に決め実行している                                     

21世紀100年カレンダーを用いて、自分の命日がこの中にあり、生涯の時間がここに

ある。日々の大切さを知ると共に自分の生き方について考える

810分始業時間であるが、社員は自主的に30分前に出社して、庭の清掃や花木の

手入れを行っている。また土日に出社して行っている者もいる。会社の庭や施設は地

域に開放され、憩いの場として利用されている。

 

 私たちは約2時間、講師の丸山さんの感動するお話に引き込まれると共に「目からウロコ」状態になりました。社員の皆様の自然体の応対がとても印象的で、こんな会社みたことない、素晴らしい会社、正に「日本でいちばん大切にしたい会社」そのものでした。

 伊那食品工業の経営目的や経営の有り方は他の殆どの会社と違います。会社は社員の幸せを追求することであり、社員の人間力の成長を一番に願う。社員の成長があれば自ずと会社経営に関する問題や課題に対して、社員が対応(考え、決め、実行し、解決すること)できるようになるのです。殆どの会社はその逆で、問題点や課題に対する対策を教え、指示します。それを実行するのは社員であり、社員がその手法を学ぶだけでは問題の解決は難しいのが現実です。

 営業や生産の現場において、①相手(周り)の意見に耳を傾け状況を把握する力 ②問題の本質を理解し、その上での判断力や決断力 ③相手に理解が得られる説明力など、業務に従事する者の人間力が求められます。

 またこの人間力は「利他の心」や周りへの「思いやり」、「協調性」など人間のエゴを超えた「人間愛」が根底に存在することが不可欠です。

 塚越寛会長の高次元な経営観と高潔な人間性が反映された伊那食品工業は、社員の幸せを追求するために、社員一人一人の成長を目指した会社作りを目指しています。

 

 私共、会計事務所はお客様の税務・会計業務やそれ等に関わる経営助言・経営支援業務をさせていただいていますが、その業務を通してお客様の経営力が向上し、業績が良くなっている姿を目の当たりにします。その事例は次の通りです。

  1. 財務会計システムの活用により月次決算や部門別業績管理体制を構築し、各種経営データが作られる。経営者は毎月このデータを活用することにより、経営の打ち手が見え、早期に実行することにより、業績が一層向上した。

  2. 上記1について経営者だけでなく、家族・幹部社員を巻き込んだ会議や情報の共有化により、組織が活性化し、全社的な経営改善の取組みが進んでいく。

  3. 営業会議に財務データを取り入れ、営業マンが月次利益の把握により目標値を明確に認識することができた。これにより営業活動の有り方が明確化し、営業マン同士の補完・支援ができるようになり、営業活動が活発になった。

  4. 資金難の会社が、経営改善計画策定支援事業(国の補助金事業)の適用による取引金融機関を集めたサポート会議により、金融支援を受けることができた。これにより社長は時間的・精神的に余裕が生まれ、取引先との交渉や社員教育に注力し、社員と共に経営改善に取り組み、業績が一段と向上し、金融機関から高い評価を受けるようになった。

  5. 経営者、管理者が短期経営計画を策定し、四半期ごとに実績検討と計画見直し会議を開催する。経営上の問題点・課題と対策について定期的な会議を持ち、経営改善に努めている。

     

     上記1の事例は先ず経営者が、会計データに基づき業績を検討し、経営改善に向けた経営の打ち手を考え、実行することにより経営改善が実現するものですが、上記2,3,4,5は家族、幹部社員・一般社員を巻き込んだ会議や情報の共有化により、組織が活性化し、全社的な経営改善の取組みとなり、より一層経営改善が進んでいることを感じます。

     その結果、金融機関からの資金調達が円滑に進み、組織が強化され、何より経営者が生き生きと、前向きに経営に当たっておられます。

                         *

     弊社は、日本最大の会計人が組織する“TKC全国会”に所属し、中小企業の黒字化支援の実現と中小企業の存続発展に貢献することを使命とし、次の活動を推進して参りますので、よろしくお願いいたします。

  1. TKC財務会計システムの活用により、月次巡回監査を実施し、関与先企業の業績管理体制の構築を支援し、経営者の財務経営力の向上を支援すること。さらに業績向上を目指して経営者・幹部社員の業績検討会を支援すること。

  2. 書面添付を推進し、税理士業務の完壁な履行を目指し、国・税務官署の信頼を得ること。

  3. 月次巡回監査を実施し、中小会計要領に準拠した決算書の作成、書面添付の実施により決算書の信頼性向上を図り、関与先企業の金融(資金調達)支援を行うこと。

     

     また後継者・幹部社員育成支援として、

  1. 経営塾の開催

    経営塾を開催し、若手経営者、後継者及び幹部社員の経営スキル習得の支援をしています。

  2. 播磨経営倶楽部を主宰

    経営塾卒業生を中心に組織化し、自社の黒字化と企業の健全発展を目指すことを目的として、例会や企業訪問、講演会を開催し、より高い志の醸成を支援しています。

 本年は“酉(ひのととり)”の年です。安定し実り、物事が成就する年といわれています。現在の厳しい経済環境の中、安定し実りのある1年にする為にも足元をしっかり見据え、運気や有用な情報を取り入れるなど、より積極的に活動することが求められます。

 

 皆様方におかれまして、穏やかで良き1年であることをお祈り申し上げます。

年頭に当たりまして、先ずは謹んでご挨拶申し上げます。

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