医療法人のメリット・デメリット

Ⅰ.医療法人制度改正によって変わったもの

 

 平成19年4月に医療法人制度が見直され、その時以後に設立できる医療法人は、これまでの持ち分のある医療法人から持ち分のない医療法人へと変わりました。

 見直し以前に設立された持ち分のある医療法人であれば、法人が利益を生み出し、その財産を形成すると、解散の際には、その出資持分に応じて医療法人から払い戻しを受けることができていました。つまり、事業を行って法人の純資産が設立時の5倍になったとしますと、退社時に払い戻しを受けることができる金額は、当初出資金額の5倍になるということになります。しかしながら、この新しい制度で設立した法人の場合であれば、いくら法人が利益を生み出し、純資産を充実させても、当初に拠出した金額までしか払い戻しを受けることができなくなりました。

 

 

Ⅱ.医療法人数は減少したのか

 

 この新しい制度により、医療法人の数は減少に転じるのではないかと言われていました。それでは制度改正から5年が経過した現在、医療法人数はどのように推移しているのでしょうか。

 医療法人の組織形態は色々ありますが、その80%以上が一人医師医療法人となっております。その一人医師医療法人数で見てみますと、平成19年3月時点では36,973件であり、平成20年では37,533件、平成21年では37,878件となっています。その後も増加の一途をたどっており、平成24年では39,947件となっております。この傾向は今後も継続することが予想されます。

 

 

Ⅲ.医療法人のメリットデメリット

 

 持ち分のメリットがなくなったにも関わらず、なぜこのように医療法人数は増加しているのでしょうか。そのためには、まず個人事業で行っていた病医院を医療法人へと組織変更することのメリットおよびデメリットを再度見直してみることが大切です。組織形態が異なるため、一概には言えませんが、主な項目としては以下のことが考えられます。

 

 

 上記の項目において、近年特に注目が高まっているポイントは以下のとおりです。

 

①租税負担率の差異の拡大

 法人税等の負担率が、個人の所得税等の負担率に比べて軽く、近年ますますその税率の差異が拡大しています。

 

②相続税負担の減少

 持ち分のない医療法人であれば、いわゆる株式会社の株式とは違い、相続税の課税対象はその拠出金額が限度となるため、相続税負担が減少します。

 

③第三者事業承継の容易性

 個人立の病医院を承継する場合であれば、譲渡側が一度事業を廃止し、再度譲受側で新しく開業することとなるため、その手続きも煩雑になりますが、医療法人の形態であれば、理事長の交代をもって次の世代へバトンタッチできます。昨今では身内に後継者のいない医師が増加しているということも、医療法人を選択するひとつの要因になっています。

 

④介護事業への展開

 サービス付き高齢者向け住宅など、個人立では運営できない事業であっても、医療法人であれば運営できます。また、グループホーム、訪問看護ステーション、小規模多機能型居宅介護などの介護事業を展開することが可能になります。

 

 これらのポイントの具体的な内容についての解説は、ご相談がある場合に個別にさせていただくとして、今回は、医療法人化のメリットデメリットについてまとめさせていただきました。皆様のご検討の材料として活用していただけると幸いに存じます。

 

㈱経営開発センター 医業経営部 為広 将也

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