レポート:第40号人材育成の動機付け

 

 拙宅は姫路市の市街地にあり、何でもない河川(船場川)のほとりにあるのですが、昨年よりホタルが乱舞しはじめました。今年も5月末から数匹淡い光を放って飛んでいます。考えられない光景ですが下水道が完備し河川の浄化が進んだということでしょうか。これからも自然を大切に自然と共存しながら暮らしていきたいものです。

 さて、貴法人におかれましては、決算と理事会が終了しほっと一息といったころかと存じます。いよいよこれから24年度の事業計画の実現に本腰を入れて進まれる時期になりました。その中でも、職員の育成が最重要課題かと思います。5年先、10年先を考えると、いつまでも現経営陣が施設を引っ張っていくことは難しく、次世代にそれを承継していく必要があり、外部から人材を招へいする手段もありますが、やはり現有の中堅職員がそれを承継していくのが、職員のみなさまにも希望や生きがいやりがいを与えることができるために、ベストではないかと存じます。

 しかし、既存の中堅職員に経営を任せていくには、何か物足りなさを感じておられることも事実かと思いますが、あきらめずに、辛抱強く真剣にその物足りなさを着実に埋めていくことが職員育成の真の目的ではないでしょうか。人間は徐々に育っていくのではなく、意識が変われば瞬時に力を発揮していく動物のように思います。その意識を変えるきっかけこそが、動機付けでしょう。

 そんな動機付け要因には条件があるようです。一つは衛生要因(不満足を感じやすい要因)で、それが不足すると不満となり、あったとしても満足するものではない基礎的な要因と言われています。それは①人間関係・チームワーク、②労働条件(賃金・労働時間・休日等)、③職場環境、④組織や職場の方針(経営理念等)、⑤管理のあり方(役割分担や指示系統等)などで、まずこれらの要因をチェックし整備した上で、動機付け要因(満足や動機付けにつながる要因で、それがあればあるほど積極的に動機付けされる要因)を付加する工夫をしていくことと言われています。

 それは①達成感(設定した目標を達成したり、利用者のADLが具体的に向上したり等)、②評価・承認(頼りにされる、ほめられる等)、③仕事そのもの(介護の仕事が楽しい、理念に共感できる等)、④責任(責任ある仕事を任される等)、⑤昇進・昇格(より上位の役割や等級に上がる)、⑥自己の成長の可能性(自分のレベルアップを実感できる、学びの仕組みがある、目標にできる上司がいる、キャリアパスの仕組みがある)の5点を意識して提供していくことが、動機付けにつながり職員の意識を変える要因であるようです。

 では実際に『どうすればいいの教えてよ』というのが私も含めてみなさまの思いかと存じます。そこで、これが一つのヒントかなという事例をご紹介申し上げますと、私がお世話になっています数施設で、国際医療福祉大学大学院教授の竹内孝仁先生が企画されています介護専門研修(自立ケア)に参加され、飲水・食事・排泄・運動など介護の基本について、具体的に自施設の利用者を対象にして目標値を設定され、現場実践された成果を次回の研修で発表し順位を付けられるという超現場主義的な介護研修のようです。その取り組みについて施設の幹部会議で報告される中堅職員のいきいきとした顔や声に接すると達成感やさらなる挑戦意欲を痛烈に感じます。自分達のフィールドで具体的な数値目標を自ら設定し、スタッフを巻き込んで実現していく。そして、もっともっとという好循環になられていて、しかも利用者やご家族に喜ばれる場面に接しておられるようで、職場の雰囲気も変わってきたとお話をされています。これこそ、前述の動機付け要因そのものかなと実感します。

 そんな動機付けのヒントは現場の中に、そして私達の足元にあるようです。

  株式会社 経営開発センター 福祉経営部 阿野英文

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