レポート:50号『60歳定年後の継続雇用について考える』

 今年は例年になく早い桜の満開のニュースが流れ、いよいよ新年度の平成25年度がスタートしました。決算準備・新入職員の受入・新事業計画の開始・組織変更・定年者の処遇など、何かと気を遣うお忙しい時期かと存じます。

 今回のレポートは、その中でも定年者の処遇のあり方を取り上げました。かく言う私も62歳で年金受給世代です。まだまだ体調も良く気持ちは40代の現役と同じで、仕事を通して社会と関わっていきたいと望んでいます。そうはいっても経営的に考えると人件費は定年時に最高値となり継続して雇用していくことは人件費を圧迫することにもなります。さらに高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用継続が義務付けられており、定年後の雇用継続については、事業主側も高齢者側も切実な問題です。

 そこで、定年後の雇用継続についてどのように考えていけば双方にとってハッピーなのかを制度化することは重要な経営課題と言えます。以下の試算は60歳時の給与と在職老齢年金、高年齢雇用継続給付金が並給された場合の本人手取額比較と、法人の人件費(給与・法定福利費)の比較表です。

 

本人手取り額

項    目

60歳時

変更給与

差  額

給与月額

400,000

249,000

-151,000

健康保険

20,438

11,964

-8,474

介護保険

3,096

1,812

-1,284

厚生年金

34,370

20,119

-14,251

雇用保険

2,000

1,245

-755

所得税

8,200

3,570

-4,630

差引手取額

331,896

210,290

-121,606

雇用継続給付金

0

33,341

33,341

在職老齢年金

0

45,600

45,600

月額手取額

331,896

289,231

-42,665

年額手取額

3,982,752

3,470,772

-511,980

法人人件費

項    目

60歳時

変更給与

差  額

給与月額

400,000

249,000

-151,000

健康保険

20,438

11,964

-8,474

介護保険

3,096

1,812

-1,284

厚生年金

34,370

20,119

-14,251

児童手当拠出金

615

360

-255

雇用保険

3,400

2,116

-1,284

労災保険

1,200

747

-453

人件費計

463,119

286,118

-177,001

年額人件費計

5,557,428

3,433,416

-2,124,012

 

 これは、本人の在職老齢年金額によって異なる場合がありますが、要は、60歳未満は給与のみで生計を維持していくまさに現役世代ですが、60歳以上(今春からは61歳:平成38年4月からは65歳へ順次年金受給開始年齢が引き上げられる)の高年齢者は、給与に加えて在職老齢年金と高年齢雇用継続給付金(60歳以降の給与が60歳時の給与の75%未満の場合に削減率に応じて給付される制度)を活用し、本人の手取年収を大幅に減額せずに、しかも法人の人件費負担を大幅に削減する工夫が必要です。一度、顧問の社労士の先生に相談されてWIN・WINの雇用継続関係を制度化されてはいかがでしょうか。

  株式会社 経営開発センター 福祉経営部 阿野英文

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