新年、明けましておめでとうございます。  旧年中は大変お世話になり有難うございました。本年も何卒よろしくお願い致します。

令和4年 元旦

お客様各位                               

税理士法人 稲田会計

株式会社 経営開発センター

グループ代表  稲田  実 

代表取締役   野崎 悦雄

専務取締役  鳥澤 靖幸

                           

新年、明けましておめでとうございます。

 旧年中は大変お世話になり有難うございました。本年も何卒よろしくお願い致します。

 

 昨年は、コロナ禍で始まりコロナ感染防止対策に追われる1年でした。5次感染(7月中旬から9月末)は、これまでの感染者数がピークとなり、8月中旬には1日国内感染者数25,000人を超える日が続きました。その後10月上旬には感染者数は500人を切り、10月下旬には200人台となり、12月まで低位な数値を維持しています。

 5次感染はオリンピックとパラリンピックの開催に関係性があると思われますが、パラリンピック終了後、感染者数は大きく減少しています。これはコロナワクチンの接種が進み(2回目接種率が77%)、私たちが集団免疫を獲得したことと思われます。

 

 昨年12月に世界で急拡大している変異株「オミクロン型」の国内感染が発生しました。

 「オミクロン型」の特性について各国の研究機関の分析は進んでいますが、南アフリカや英国の機関は、「重症化や入院リスクは低い」との研究結果を発表しました。

 ただ「オミクロン型」は感染力が強く、感染者数が増え続ければ医療を圧迫するだけに、感染対策の必要性を訴えています。

 私たちは、自粛生活や非対面の仕事にも慣れましたが、少しずつ規制も解かれ、飲食業・ホテル業・交通機関など接客・サービス業に賑わいが戻ってきましたが、本格的な回復にはもう少し時間がかかるのでしょうか。

 

 コロナ禍3年目を迎え、これまでの自粛対策だけでなく、新型コロナ感染症に対する治療が進み、新型コロナウイルスは怖くないというステージに進み、私たちの暮らしや経済が開放に向かっていくことを願います。それには次の点に注目したいと思います。

➀ 地方自治体と医療機関の定期的なワクチン接種の体制づくり

② 接種証明の発行(スマホ向けアプリの運用など)と接種者の行動の自由化

③ 重症者数の把握と医療供給体制(スタッフ数、病床数、設備など)の対応

④ 軽症者に対する治療薬の開発と医療機関の専門性の発揮

 

 コロナ禍は、私たちに多くの学びを与えてくれました。10年先の未来に対する取り組み課題が、スピードを増してやってきているようです。それは、以下の通りです。

(1)人材の生かし方とライフ・ワークバランスの取組み

(2)デジタル社会の実現

(3)脱炭素社会の実現、CO2削減と再生可能エネルギーの普及拡大

 *

(1)人材の生かし方とライフ・ワークバランスの取組み

 これまでのコロナ禍2年間は、リモートによる非対面業務、在宅ワーク、フレックスワーク、サテライト事務所によるワークなど、就業者の働き方に大きな変化をもたらしました。

 昨年10月~12月は、コロナ感染者も激減し、通常の生活に戻るべき状況に至りましたが、就業者はリモートワークや在宅ワークを引き続き希望するとのこと。コロナ禍はビジネスマンがビジネスと人生の楽しみ方を学ぶ機会でもありました。

 

 この学びを社員の能力開発と捉え、社員3900人に副業を解禁した企業があります。カルビーという会社で、他の企業で働いて得た知見を会社の業務に生かすことや多様な働き方を認めて優秀な人材の確保につなげることが狙いです。

 

 またコロナ禍は、大学生の就職活動において、東京など大都市や大企業偏重の視線に変化が生まれています。大学の講義がオンラインとなり、故郷に戻り、オンライン授業の合間に地元の企業や地域社会に触れることにより、地元の生活に住み心地や安心感を感じ、東京へのあこがれが薄れていくことになります。

 厚労省は、若者の地方就職を促すLO活(ロウカツ)プロジェクトにより、首都圏50の大学で就活セミナーを実施しており、参加者の多くはUターンを検討しているとのことです。

 コロナ禍は、大学生の視線を東京から地方へと移すきっかけとなっています。

 

 かって企業は、社員に仕事中心の生活を強いていたかもしれません。仕事と生活の調和を図り、その両方を充実させることにより、仕事と生活の相互に良い影響を及ぼしながら相乗効果を生むことになります。

 就労者減少の昨今、就労者が子育てや親の介護ができる、多様な働き方が選択できる労働環境の整備・構築が求められます。

 企業にとってライフ・ワークバランスの取組みは、社員が安心して働くことができ、企業に対する信頼感や参画意識が向上し、人的資源の確保につながるのです。

  

(2)デジタル社会の実現

 ICT、IoT、AI(人工知能)などの技術革新により、従来人間の知識、知恵・判断力によって導き出されていた価値がインターネットで繋がり、情報交換をすることで相互に制御し、判断することにより、人間が導き出していた価値以上のものを、早期に創造することになります。

 この価値創造はあらゆる産業に大きな変革を与えていくことになります。そこでAIにより新たな価値創造に挑戦している事例を紹介します。

 大学入試センターの石岡恒憲教授、東京農工大の中川正樹特任らの研究グループが、大学入学共通テストの試行調査で得られた記述式問題の手書き答案を最新の人口知能AIに自動採点させたところ、ほぼ人間並みの精度があることが分かった。

 石岡教授によるとその内容は次の通りです。

研究テーマ

 「大学入学共通テストの記述式問題に対する解答のAI化」

研究の背景

 「一般的に記述式問題は多肢選択式に比べ、適切かつ短時間に採点できるのなら、利用価値が大きいと考えられている。記述式問題導入の鍵となるのは、人間並みに精度の高い自動採点システムの実現であろう。入試の現場では採点者の採点によるばらつきやミス、採点に係る時間は大きな問題だ。」

研究内容

 「我々はまず、手書き文字認識を担うAIに前後関係の文脈を考慮して文字を読み取らせた。これには事前に4種類のAIが100万件超の手書き文字データを学習し、それぞれの観点で文字の候補を絞った後、最終的に文字を決める。

 次に採点は、AIには事前に全体の8割の解答を、人間が採点した結果を学習させている。その結果人間の採点と平均で96%が一致している。最も一致率の低い  場合でも93%だった。」

研究成果

 「この研究結果が意味するところは、手書き文字認識から自動採点までを一気通貫で行い、AIが採点メカニズムを理解するための補助輪を一切用いないことである。補助輪を使うことにより採点の精度は上がるが、採点時間に制限のある大規模試験では現実的でない。」

今後の課題

 「今後の課題は採点データなしに採点を行うことである。模範解答の意味的な一致をもって判定することが考えられる。これが実現できるとAIによる自動採点の利用の場が格段に広がるだろう」と述べている。

 

 「思考力、表現力、判断力」を測定するための記述式問題の解答をAIが担う時代。AIは言葉の意味を理解して採点しているわけではないですが、それと同様の結果を出すことにより、社会から信頼が寄せられ、実用化に向かうことになります。

 

 国は構造転換を促す成長戦略としてデジタル化を打ち出し、デジタル庁を発足させデジタル社会を目指しています。また人材の確保と定着の観点からもデジタル化は必須となります。

 

 令和5年10月から実施される消費税のインボイス制度(適格請求書などの保存方式)や電子取引データ保存は、中小企業にとって大きな負担となりますが、IT活用以外にその対応が困難といえます。

 

 一般的に中小企業のIT化は遅れているといわれていますが、今後中小企業が存続するためには、IT化は避けて通れません。

 

 

(3)脱炭素社会の実現、CO2削減と再生可能エネルギーの普及拡大  ・食品業界の廃棄物削減の取組み

 公正取引委員会は、「セブンイレブンなどコンビニ大手3社は、2020年9月コンビニ本部による値引き抑制や24時間営業の強制が独占禁止法違反に当たる」との見解を示しました。

 その後1年経ち、ローソンでは値引き販売を店舗の9割が実施しており、ファミマは8割の店舗で実施しています。食品廃棄は社会問題として注目されており、これを無視する、単に一企業の経営では済まされない状況にあります。

 さらに我国の食品小売業界は、次のような食材の100%活用に向けた取組みをしています。

 「農林水産省の2019年の調査によると主要野菜の収穫量は1340万トン、対して出荷量は1157万トン、収穫量の14%に当たる180万トンが規格外品などにより廃棄に回っているとのこと。この廃棄部分を農家から引き取り、加工し、商品化することにより、CO2削減につながり、さらに農家の経営安定につながる。」

 「包装容器の変更や温度管理の徹底により消費期限の延長が可能となり、廃棄量を削減する。また廃棄物を飼料や肥料にしたり、また発酵させバイオガスを燃料として発電に生かす。」

 

 ESG(環境・社会・企業統治)対応に向ける投資家や消費者の目が厳しくなっており、食品小売業界は食品廃棄物の削減を迫られています。

 

・自然生態系の保護及びESGの取組み

 昨年2月、ジョンソン英首相は、ケンブリッジ大学名誉教授に依頼した経済活動と自然の関りを分析した「ダスグプタ・レビュー」を公表しました。それによると、約20年間で機械やインフラなど「人工資本」が倍増した一方、森林や海洋物、鉱物など資源を合わせた「自然資本」は4割減少しています。

 パーム油産地のインドネシア、スマトラ島では乱開発で森林が約30年間で6割減少しています。

 国連によると食料の75%を大量生産しやすい12種の穀物と5種の家畜が占め、生物の多様性を脅かしています。

   

 経済界の論客である米国セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフCEOは 「最大のステークホルダー(利害責任者)である地球に貢献できなければ他のステークホルダーの利益にも敵わない」と言っています。

 複雑極まりない地球環境への貢献は可視化が難しいと言われ、生物多様性の喪失を懸念する一方、投資判断の指標がないとのことですが、指標が整備されれば企業の重要な評価軸となると言われています。

 「企業は、自己資本利益率(ROE)など財務指標と自然資本の両立が求められる時代に入った」とのことです。

 一方、温室効果ガス排出側の石油メジャーは、株主や投資家から液化天然ガスや再生可能エネルギ-などの低炭素事業と化石燃料事業の分離を求められ、それに対して「我々は脱炭素に移行している最中だが、一気に脱炭素を実現しろという。そういう要求こそ移行を妨げるのだ。低炭素事業に移行するには巨額な投資が必要であり、原油開発で得たキャッシュが必要である」と化石燃料を使いながら時間をかけて脱酸素を進める経営の正当性を訴えています。

   

 急速に普及したESGですが、再生可能エネルギーは化石エネルギーに代替するほど安定供給できておらず、化石燃料に対する軽視する姿勢がエネルギー供給不足を生み、価格高騰を招くことになります。市場とエネルギー供給企業の調整が必要であり、政府にその役割が求められます。

 

・カーボンプライシングの導入

 温室効果ガス排出削減のための政策として、炭素税、排出量取引制度などのカーボンプライシング(CP)を導入する国・地域が拡大しています。炭素税は、1990年にフィンランド、ポーランドでスタートし、その後欧州に導入が進み、現在世界35の国・地域で導入されています。(日本は2012年に導入される)化石燃料(原油、天然ガス、石炭)の購入時に、課税という形で政府が決めます。 

 国の税収につながりますが、CO2排出量の削減効果の予測は難しいとのことです。

 

 排出量取引制度は、2005年EUで初めて導入され、日本では2010に年東京都、2011年に埼玉県に導入されました。この制度は対象企業(発電、石油精製、製鐵、セメントなどエネルギー多消費産業)に対して排出量枠が割り当てられ、実際の排出量が枠を超える場合には超える部分を市場から購入しなければならず、排出量に余剰がある場合には余剰部分を市場に売却することになります。

 米国では2009年ニューヨーク州など北東部の州でスタートし、2013年カリフォルニア、2021年バージニア州など11州が参加しています。

 温室効果ガス排出世界一の中国は、2013年に北京市、天津市、上海市、広東省、湖北省、重慶市など7省・市が開始し、その後福建省、四川省が加わった。韓国、ニュージーランド、スイスなどに導入され、世界29の国・地域が参加しています。

 

・世界自動車メーカーのEV化の加速

 昨年は世界自動車メーカー各社がEV車を発表し、EV化に向け加速しています。課題は、走行距離の伸長と充電インフラの整備であります。

 また世界各国は2030年~2040年には、ガソリン車やディーゼル車の販売禁止宣言しています。

                    *

 私たちは、10年、20年先の未来に対し“脱炭素社会の実現”と“デジタル社会の実現”の2つの課題があり、今後産業社会はこの2つの課題に向かって進んで行きます。

 そして永遠の課題である“人の生きがい、働きがいのある社会(企業)の実現”です。

 成長・発展する企業の条件として、前記3つの課題に取り組むことが必須であり、企業は、ライフ・ワークバランスの実現に向けた改革にスピード感をもって邁進していくものと思われます。

 弊事務所ではお客様の税務・会計の支援を基本に、利益資金の両面から経営助言・経営支援を行っていますが、お客様の“変革”を願い、職員一同研鑽して参りますので、何卒宜しくお願い申し上げます。

                    *

 本年は“壬寅(みずのえとら)”の年です。壬は“痛みを伴いながら幕を引く”ことを意味し、寅は“殻を破ろうとする命の息吹、希望”を意味します。

 

 皆様方におかれまして,良き一年であることを祈念申し上げます。             

                    

 年頭に当たりまして、先ずは書面を持って謹んでご挨拶申し上げます。   

カテゴリー: NEWS&TOPICS, 医業セミナー&トピックス, 最新情報, 福祉セミナー&トピックス, 福祉経営コンサルティングレポート   パーマリンク