レポート:105『職員定着のための諸施策の推進事例紹介』

 今月のコラムは介護・支援スタッフ定着への対策について報告させていただきます。

 今、各施設にあっては介護・支援スタッフの不足が深刻な経営課題となり、正常な運営すらできない危機的な状況にあります。そこで、今こそスタッフの定着に向けて真剣にできることは全て実施する真摯な姿勢が必要かと思います。下記にその対策事例を紹介させていただきますので、何かの参考にして頂ければ幸いです。

(1)    職員採用の専用パンフレットの作成とホームページへの搭載。(求職者は必ず施設のホームページを閲覧します。先輩職員の声や就職サイトへのリンクなど工夫をされている施設も多数見受けられます)

(2)    応募時の職場説明・現場見学・体験などを徹底。(定期のオープンセミナーや見学会などを実施されている法人もあります)

(3)    入社式を開催し、ウェルカムの意を伝える。(4月に新卒の新入職員には実施されている施設は多いですが、中途採用の場合は、職場での紹介のみが多いようですが、中途採用にあっても幹部や職員が集合して入社式をして歓迎の意を示すことは帰属意識の醸成につながり重要です)

(4)    現場配置後、エルダー制度等により一対一で細やかな育成を図る。(1か月単位で目標設定と振り返りの確認をされている施設もあります)

(5)    各種業務マニュアルを整備し、新人でも業務の進め方等を解りやすくしている。(介護技術標準として良しとする所作を写真に収めたマニュアルを作成されている施設もあります)

(6)    施設の経営理念を現場に浸透させ、働き甲斐や生き甲斐につなげる努力。(毎日の業務の究極の目的として経営理念がありますので、つらい業務を通じて社会に貢献している実感を伝えることは重要ですし、他者に対するお役立ちの体感がスタッフの生き甲斐や働き甲斐に直結します)

(7)    施設の経営計画や職場の年間取組目標を職員へ開示し共有する。(管理職員はしっかりと把握しているが、一般職員やパート職員は把握されていない事例が多々見受けられます。チームケアの原点は同じ目標を全員で共有することが大切ではないでしょうか)

(8)    職場の組織図や指示命令系統を明確に開示。(指示をする上司が何人もいて、しかも内容が微妙に違いがあり、誰の指示で業務を遂行したらよいのか迷っておられるスタッフも多いようです)

(9)    定期的に上司による個別面談を実施し、個別相談に応じる仕組み作り。(毎日の現場ではスタッフとゆっくりと話し合う時間も余裕もない状況の中で、年2回の評価のフィードバック面接時に個別相談も含めてスタッフと話し合いの時間を持つ意義を実感されている管理職もおられます)

(10)職員とのコミュニケーションを図るための食事会などを定期的に開催。(京セラの稲盛氏は社内コンパを重視され腹を割って話をする重要性を説かれています)

(11)朝礼など職員が集まる機会を作り、全体のコミュニケーションを図る。(各部署での申し送りやミーティングは実施されていますが、全部署が集まっての朝礼はされていない施設が大半です。仕事柄難しいとは思いますが、月に一回は全体朝礼で理念や方向性を確認される必要はあると思います)

(12)職員の意見や提案を吸い上げる仕組み。(会議や委員会などで吸い上げておられる施設が多いようですが、職員アンケートなどによりますと、現場の意見をあまり聞いてくれないとか、提案をしてもなかなか対応してもらえないという叫びが多々あります)

(13)スキルアップやキャリアアップの仕組みを明確化し開示。(自分の3年先・5年先・10年先が可視化できるものがあれば、中長期的な自分の歩むべき道を目指して頑張れるのではないでしょうか)

(14)中間指導職や管理職に対して、部下の指導方法など研修を実施。(どうすればスタッフは自発的に継続的に動いてくれるのか悩んでおられる指導職も多いなかで、コーチング技法を学ぶ意義は大きい)

(15)職員の頑張りを公正に評価する評価制度があり、評価結果をフィードバックし育成する。(評価制度を導入されている施設も多くなりました。評価制度はその目的は人材育成ですから、結果のフィードバックに力点を置いて、評価項目のC評価をいかにしてB評価に上げていくかをスタッフと話し合う情熱はどうでしょうか)

(16)資格取得支援のための時間的・経済的な措置をし、取得後処遇に反映。(これについてはかなりの施設で熱心に取り組まれているようです)

(17)子育て世代の職員への支援を推進。(女性スタッフが多い職場ですから、結婚・出産などにやさしく対応できる制度構築は不可欠。保育料半額補助や時短勤務制度など子育て支援計画を立てておられる施設も見受けられます)

(18)部門別・職種別・個人別の残業時間や有給休暇の取得状況を把握。(職員アンケートによりますと、残業時間や有給休暇の取得に職種間・個人間の格差が大きいと不満を持っておられるスタッフが多いのも事実ですし、サービス残業の常態化を嘆く声も多々あります)

(19)永年勤続表彰など表彰制度で定期的に表彰を実施。(みんなの前で表彰を受け、拍手をいただくことはスタッフにとってうれしく誇りになります。また、後輩スタッフの励みにもなります)

(20)長期休暇制度やリフレッシュ休暇推進の仕組み作り。(今のスタッフ不足から全く不可能であるという考えから、少しでも実現できる方法を模索する時期ではないでしょうか)

 まだまだ、いろんな取り組みをされている施設もあるかと思いますが、以上の20点を今一度点検されて、スタッフの定着化に向けて前進されることを心から祈念申し上げます。

文責

(株)経営開発センター

参与 阿野 英文

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