レポート119:「働きやすい福祉の職場」づくり

 介護員・支援員・保育士など福祉関連の人材不足は非常に深刻な状況を呈しています。そこで、今月号は「働きやすい福祉の職場づくり」について東京都の取り組みをご紹介いたします。以下は東京都のホームページから引用しています。

 東京都は平成29年度から「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」事業を開始しました。この事業は、働きやすい職場づくりに取り組むことを宣言する高齢・児童・障がい分野の事業所の情報を学生や求職者に広く公表することで、人材の確保と定着を応援する制度です。東京都における福祉人材の確保は厳しい状況にあります。平成28年度の都の有効求人倍率は、介護関係職種5.86倍、保育士4.86倍といずれも全国よりも高い値となっています。

 一方、福祉の職場を離職した方の多くが、「法人・事業所の理念や運営の在り方に不満があった」(33.5%)、「収入が少なかった」(28.0%)、「将来のキャリアアップが見込めなかった」(17.6%)、「労働時間・休日・勤務体制が合わなかった」(21.8%)など、事前に十分な情報を得た上で入職していれば離職を防ぐことができたと思われる理由で、以前の職場を辞めている現状があります。

 「TOKYO働きやすい福祉の職場宣言」事業は、働きやすい職場づくりに取り組む事業所が、人材育成、キャリアパス、ライフ・ワーク・バランス、職場風土など「働きやすさ」に関する情報を公表することで、求職者が勤務条件や職場環境を十分に吟味した上で自分に合った事業所を選択することを可能とし、その結果、入職後のミスマッチを防ぎ、定着率を高めることをねらいとしています。

 以下、当事業が示す17のガイドライン項目を列挙します。

   1.運営方針・理念を明文化している

   2.採用前の職場体験や職場見学を実施するなど、求職者に対し職場環境に関する              情報を発信している

   3.求める人材像を明確にしている

   4.新規採用者を育成する体制を整備している

   5.職層、役割ごとの人材育成環境を整備している

   6.マニュアル等を整備し、人材育成に活用している

   7.外部研修、勉強会等職員の能力開発を奨励している

   8.キャリアアップの仕組みが整備されている

   9.仕事の成果・取組状況等に対する評価を実施している

  10.評価に応じて処遇改善する仕組みを準備している

  11.休暇取得、超過勤務縮減に向けた取組を実施している

  12.仕事と育児・介護が両立できる取組を実施している

  13.健康管理(メンタルヘルス対策含む)に関する取組を実施している

  14.職場内でのコミュニケーション活性化のための取組をしている

  15.表彰制度など職員のモチベーションを高める取組を行っている

  16.苦情やクレームに対して、組織として対応する体制がある

  17.地域貢献や地域との交流を実施している人材不足を嘆く前に、「働きやすい福祉の職場づくり」を積極的に推進することが大きな経営課題となっています。その実践度が高い施設に人材が集まる時代になっています。

 以上の17項目ですが、申請時に提出する資料や現地で確認させていただく内容および現 地でヒアリングする内容などが併記されており、単に仕組があるだけでなく、それが組織全体に浸透しており有効に活用されていることが要件となっています。一度、東京都のホームページを閲覧されて自施設の現状分析をされてはいかがでしょうか。

文責  (株)経営開発センター  参与 阿野 英文

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