レポート116:『新規採用と職場定着、 両輪での取組の必要性』

 

 11月になり、気温も随分と下がってまいりました。法人様によっては年末に向けてのご準備等、これからお忙しい時期に向けてのご準備をされておられるのではないでしょうか。

 今回は、私自身が法人様にお伺いした際によく耳にする、職員不足についてお伝えしたいと思います。新規採用の難しさや外国人労働者の活用など、新規採用に関する取り組みはよくお聞きしますが、それと同等に重要だと私が感じているのが、退職者の減少・離職率の低下です。新規採用については、今後もより一層厳しくなるかと思います。そんな中で退職者が増えれば、それこそ事業継続が困難になってしまいます。そのため、新規採用に力を注ぐのと同じように、退職者を少なくすることを考えることも大切ではないでしょうか。

 そこで、今回は公益財団法人介護労働安定センター発出の平成29年度介護労働実態調査結果の中から、「前職の介護職を辞めた理由」についてお伝えしたいと思います。

 公益財団法人介護労働安定センター 平成29年度介護労働実態調査「9 前職の介護職を辞めた理由」

 新たな処遇改善について社会保障審議会などでも議論がされていますが、退職理由のなかで「収入が少なかったため」を理由にしての退職は6番目となっています。それよりも、職場内での人間関係や、運営面への不満、自身の将来像が見えないことへの不満の方が退職理由の割合としては高いのです。もちろん収入面での処遇改善も重要な要素ではありますが、施設内の風土の良化や法人・施設・事業の理念の浸透、将来像が描けるキャリアパスの作成といった「働き甲斐のある職場づくり」も非常に重要な要素なのだと思います。

 その他、職員の方の職場定着のために実施できる具体的な取り組み例としては、「職員同士での食事会や、定期的な朝礼など、職員間でのコミュニケーションを図る機会を作る」といった人間関係への取り組みや、「法人の経営理念や施設の経営計画を共有、浸透させる」「組織図や指示系統の開示、定期的な上司による個別面談の実施」といった働き甲斐を持っていただくための取り組み、「職員の意見や提案を吸い上げる仕組みづくり、スキルアップやキャリアアップの仕組みを明確化し開示」「中間指導職や管理職に対して、部下の指導方法など研修を実施」といった将来像を持って働けるようにするための取り組みなどが挙げられます。 

 新規採用にだけでなく、既存の職員の方の定着を加えた両輪での取り組みにより、今後より一層厳しくなるであろう人財難に立ち向かうことが必要なのではと感じております。

株式会社 経営開発センター 福祉経営部 山口 恭右

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