レポート115:『台風被害を教訓に改善』

 この度の台風21号は、非常に強い勢力で記録的な暴風となりました。ある法人様に訪問をさせていただくと、この台風で停電になったことをお聞きしました。その時の経験で、「真っ暗な中、懐中電灯では1方向しか照らせないので、間に合わなかった。部屋全体を照らせるランタンが必要だった」ということをお話されていました。

 

 近年、地球温暖化の影響もあって、大型の台風が日本に上陸しやすくなり、洪水や土砂崩れの被害を多くもたらすようになりました。また、今年に入ってから大阪や北海道で大きな地震が連続で起こっており、将来的には南海トラフ地震などの大型地震が高確率で発生すると言われております。

 大規模な災害が起こった場合、資源やサービスが限られ、平常時の運用はできなくなります。しかし、そのような事態が起こっても、施設は入居者の生命・生活を守らねばならないため、事業運営を止めるわけにはいきません。災害によって生じる影響をできるだけ抑え、事業を継続できるよう対策を講じておくことは、施設経営を行う上で必要であると感じております。

 

 神戸市の平成30年度指導監査方針の重点指導事項が示されておりました。その中にも、備蓄(飲料水、生活用水、食材、衛生用品等)の保管場所を含めた防災マニュアルを作成し、地震、津波、土砂崩れ等、自然災害を想定した訓練を実施することが明記されております。

 将来、起こる可能性がある大震災の影響を最小限に抑えるためには、事業を早期に回復させるためのBCP(事業継続計画)をあらかじめ策定しておくことが必要と考えています。しかし、BCPの策定までを義務付ける法律は現在ないそうです。ただ、取り組まれている法人様もあるのも事実です。

 ①防災マニュアルは、生命、財産を守るためのもの。②BCPはサービスの提供継続のためのもの。と車の両輪と考え、取り組んでいるそうです。

 

 地震が発生したとき、災害復旧など平常時以外の業務を行う必要がでてきます。そのような状況の中、優先度の高い業務、つまり重点業務を事前に決めておき、いざというときに進めていくことが重要です。重点業務を決定する上で、事前に検討しておくべき事項をまとめた一例を以下に記載しております。

 

項 目

検 討 事 項

ハード面の対策

・耐震能力を把握し、必要に応じ耐震工事を検討する

・落下により人が損傷する可能性があるものは、落下防止策を検討する

・消火設備類の充実を検討する

・被災時において、通信できる可能性が高い方策を検討し、導入を図る

・電気、水道、ガスが止まった時の対策を検討する

ソフト面の対策

・利用者を安全に避難できるように、施設内外の避難場所や避難ルートを確認する

・応急手当などの救護活動が行えるように準備をする

・職員および職員家族の安否確認の方策を検討する

・建物、設備の被災状況の報告や応急措置が速やかにできるよう方策を検討する

・最低3日は継続できるよう備蓄品リストを整備し、備蓄する

全国社会福祉施設経営者協議会「福祉施設経営における事業継続計画【地震対策編】」より

 

 BCPの基本は代替戦略といわれております。地震が発生した場合は、必ず経営資源がなくなる、あるいは足りなくなると考えて、その不足するところをどう補うかを決め、BCPに落とし込んでいきます。策定にあたっては、情報不足、マニュアルがあまりない為、初めから完璧なものは難しいと、取り組まれた法人様では話されておりました。ただ、施設建物の耐震チェック、あるいは水や食料品の備蓄など、できるところから手をつけ、それらを少しずつ改善することで、自法人の事業継続能力の向上を目指していく必要があると感じております。

 

株式会社 経営開発センター 福祉経営部 稗田 修生

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